IwaiHudoyamaEd20120224 「ヘラサギの嘴」状に太平洋に突き出した銚子半島とそれに続く下総台地上は、沖合で黒潮と親潮がぶつかる影響で、暖流系の常緑広葉樹林(スダジイ・タブ・ヤブツバキ等)と寒流系の針葉樹林(モミ等)が混交しているのが、原初の林相です。この林相は今でも、小船木町2丁目に西側で隣接する、旭市岩井『岩井の不動滝山』(左写真、右端の「倶利迦羅不動尊」に滝水が降り注ぐ)の千葉県指定天然記念物の「極相林」に見られます。

 今の銚子市域で、多少とも森らしい森を探すと、豊里台の南側、長山町から富川町までの忍川流域、および野尻町から猿田町にかけて、に僅かに残るのみです。無制限に民間に任せておけば、低地の森は法面を残して全てが畑作地帯や畜産施設と化し、丘陵地の森はゴルフ場や山砂採取場や産廃処分場や産廃&残土の不法投棄場になります。

 小船木町2丁目に南側で隣接する猿田町の『猿田神社』と、銚子半島南部・高神西町の『渡海神社』に、千葉県指定天然記念物の「極相林」があります。これらを見れば分かるように、江戸期ないし戦前までは神社の社叢として、その後は県が天然記念物に指定しない限り、森は守られてきませんでした。

 一方で、森林は水源涵養林でもあります。地下水だけでなく、本城浄水場に入る黒部川水系高田川水系も、浄水場で塩素投入によってB.O.D.値は下げているものの、農薬や廃棄物による化学汚染は除去しきれていません。旭市の松が谷(旧海上)地区を水源とする、上述の忍川は、硝酸系窒素の閾値超えで、現在は取水休止になっています。
 さらに、水道水への塩素投入は、塩素が微生物を分解した際に発生するトリハロメタンの問題を起こします。トリハロメタンは肝障害や腎障害を引き起こすことが知られており、また発癌性や催奇形性も疑われている物質です。

 千葉県が公表するデータを見ても、銚子市は、ガン、中でも肝臓&胆管+胆嚢&胆道のガンによる死亡率が高止まりしていることが見て取れます。「沈黙の臓器」肝臓は、飲食物や皮膚から摂取した毒物に対する解毒を主な機能とする器官です。肝臓ガンの発生は、肝臓の能力を超える有害物質を摂取した可能性を示唆しています。

 水分は人体の70%を占めています。農業・畜産振興も商用施設の建設も、市民の生活のために必要なものですが、「市民の生命の維持に欠かせない、地下水・水道水の水質の向上と、水源涵養林の育成もまた、欠くことができない」と思う人々が、長らく声を上げているのは、不思議ではありません。


【追記】
 船木郷一覧_古代に、船材を伐り出す職掌の船木部ガ置かれたエリア
 
 1.遠江国蓁原郡舩木郷 ⇔ 静岡県榛原郡吉田町神戸字青柳から島田市南原、船木、湯日の付近
 2.下総国海上郡舩木郷 ⇔ 
銚子市船木町の周辺、御船山から船材を伐り出した 
 3.近江国蒲生郡舩木郷
 ⇔ 滋賀県近江八幡市の中央部  
 4.美濃国本巣郡舩木郷
 ⇔ 瑞穂市居倉付近 
 5.安芸国沼田郡舩木郷
 ⇔ 広島県豊田郡本郷町船木と賀茂郡大和町大草 
 6.安芸国安芸郡舩木郷
 ⇔ 庄山田村の船木(現呉市) ⇔  和庄、宮原、警固屋、吉浦、大屋などの諸村に及ぶ
 7.安芸国高田郡舩木郷
 ⇔ 船木村(高宮町船木)は佐々部と相併せ、船佐と改称 
 8
尾張国山田郡舩木郷 ⇔ 名古屋市守山区南部、または春日井市北東域神領ジンリョウ町ほかから小牧市の一部
 9
丹後国竹野郡舟木の里 ⇔ 竹野郡弥栄町船木(竹野川支流の奈具川上流)を含む一帯
10
伊勢国多気郡相可郷 『古事記』佐那の県 ⇔ 三重県多気郡多気町